“故(な)” の例文
「抜地獄」と称するこの寮の秘密を、お露は故(な)き父から聞いて知っていたのである。が、彼女もその富を享楽(きょうらく)する機会を与えられなかった。
あたしは、それから夕方までを、故(な)き夫の隠匿(いんとく)している財産探しに費(ついや)した。茶の間から始まって、寝室から、書斎の本箱、机の抽斗(ひきだし)それから洋服箪笥(ようふくだんす)の中まで、すっかり調べてみた。
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「故(な)き高阪郡兵衛殿といい、また山県大蔵殿といい、いずれも随分真面目だのう」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
訴訟用で諸国から出府する者のための公事(くじ)宿と、普通の商人宿を兼ねていて、間口も広く、格式も相当高く、まず界隈での老舗(しにせ)だったが三年前に亭主が故(な)くなって今は女主人お美野、これは
ま、お美野さんがお故(な)くなりになったとすりゃあ、ちょっくら蔵前へ走らせたでごぜえやしょうな。常磐津の名取りで文字若さんてえ女が、お美野さんの妹さんでね、三好代地(みよしだいち)に稽古場の看板を