“擲(ぶ)” の例文
「エアさん、何んて呆(あき)れたことをするのでせう、お坊つちやまを擲(ぶ)つなんて! あなたの恩人の息子(むすこ)さまを、あなたの若主人を!」
が、彼(か)の赤目のちぢれ毛の跛を打(ぶ)ったように生徒を擲(ぶ)ったことを聞かぬ。或時には癇癪(かんしゃく)を起(おこ)して持っている石筆をば、ストーブを目がけて投げ付けたことがある。
点 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ムム親方と十兵衛とは相撲(すもう)にならぬ身分の差(ちが)い、のっそり相手に争っては夜光の璧(たま)を小礫(いしころ)に擲(ぶ)つけるようなものなれば、腹は十分立たれても分別強く堪(こら)えて堪えて
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
訳が分らないで怒鳴りつけられたり擲(ぶ)たれたりして、恐ろしそうに竦(すく)んでいる子供達の肩を撫でてやりながら、禰宜様宮田は、黙然としてその罵詈讒謗(ばりざんぼう)を浴びていた。
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
恒兄に擲(ぶ)たれたのが腹が立つなら、私が成代(なりかわ)って謝るからね、何だね、子供の時から一つ処(とこ)で育った心安だてが過ぎるからの事だよ、堪忍おしよ、お父さんもお年がお年だから
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
たび/\、眼の前で、ジョンが、私を擲(ぶ)つたり、罵つたりすることがあつても、母のリード夫人は、見ても見ぬふりをし、聞いても聞かぬふりをしてゐた。
私は、いまに毆(なぐ)られると思つた。擲(ぶ)たれるのを怖れながらも、いまにジョンが、どんな、厭な、見苦しい顏付をして見せるだらうかと思つて、内心樂しんでゐた。