“披(あ)” の例文
晩年の作で、ホラ、「ヴァジン・ソイル」——あれを会社へ持って行って、暇に披(あ)けて見てるが、ネズダノオフという主人公が出て来らあね。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
何か書いたものを持って来て何(なん)と云っても帰らないから、五十銭も遣(や)って、後(あと)で披(あ)けて見ると、子供の書いたような反故(ほご)であることなどが度々(たび/\)ありますから
これは、他の奉書文書とちがって、紙質も杉原紙のように茶がかっており、何しろ、そッと披(あ)けないことには、折目からすぐ切れてしまいそうなほど、紙も墨色も窶(やつ)れている。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たゞいま箱丁(はこや)が帰って申しますには、春泉へ参って小歌さんを呼出して貰い、じかに渡しましたところお客さまはどなただとの尋ねだそうで、存じませぬと云うとこの手紙を披(あ)けて見て
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
それから相川は本を披(あ)けて、畳の上に寝ころびながら読み初めた。種々(いろいろ)なことが出て来る。原や高瀬なぞの友達のこともある。何処へ嫁(かたづ)いてどうなったかと思うような人々のこともある。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)