“怖(ご)” の例文
怖(こ)わ怖(ご)わその子を抱いて来ると、すぐに自分が受け取りながら、「おお、これは可愛い子だ。泣くな。泣くな。今日(きょう)からおれが養ってやるわ。」
捨児 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は長い躊躇(ちゅうちょ)のあとで怖(こ)わ怖(ご)わ、朝の白い光線に曝された、恋人の上にかがみ込んで、彼女の体を注視した。
虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一同、麦酒の酔も醒果てゝ、やゝ暫くは呆々然としてゐたが、そのうち怖(こ)は怖(ご)は小半次が
落語家温泉録 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
怖(こ)わ怖(ご)わ右手(めて)をあげて、自分の顔を撫(な)でまわしてみた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
同時に又水瓶(みずがめ)の中から猿が一匹躍(おど)り出し、怖(こ)わ怖(ご)わ十字架に近づこうとする。それからすぐに又もう一匹。
誘惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
怖(こ)わ怖(ご)わそこへ目を当てました、最初は眼界全体にむら雲の様なものが拡(ひろま)って、何が何だか分りませんでしたが、目の距離を色々に換えている内に、やがて、その向側に、恐しい物の蠢いているのが
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
房子はとうとう思い切って、怖(こ)わ怖(ご)わ後(うしろ)を振り返って見た。が、果して寝室の中には、飼(か)い馴(な)れた三毛猫の姿さえ見えない。やはり人がいるような気がしたのは、病的な神経の仕業(しわざ)であった。
影 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)