“孵(か)” の例文
何ものかが次第に浸(し)み込(こ)んでくるようにも思われ、また何ものかが生れ出ようとして悩んでいるようにも思われる。抱いた夢は雛(ひな)を孵(か)えさねばならない。
鶯(うぐいす)は時鳥(ほととぎす)の卵を育てゝ孵(か)えすというが、その事は彼等の世界には、何等の悲劇も齎(もた)らさないのだろうか。
朝起きて顔を洗いに出ると、春が雛(ひよこ)の孵(か)えたのを知らせた。石田は急いで顔を洗って台所へ出て見た。白い牝鶏の羽の間から、黄いろい雛の頭が覘(のぞ)いているのである。
鶏 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
箱の中には孵(か)へされた小魚が蟲の樣にして泳いでゐた。
みなかみ紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
「今年は何台卵を孵(か)えすんだね」
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
知らぬ繼子(まゝこ)を孵(か)へさせた。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
孵(か)えた雛(ひよこ)は雌であった。至極丈夫で、見る見る大きくなる。大きくなるに連れて、羽の色が黒くなる。十日ばかりで全身真黒になってしまった。まるで鴉(からす)の子のようである。
鶏 (新字新仮名) / 森鴎外(著)