“圏(わ)” の例文
旧字:圈
写生しているそのまわりに子供たちが圏(わ)をかいていることもある。かれは弥勒野(みろくの)の初冬の林や野を絵はがきにして、小畑や加藤に送った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
さっきまでは居る影さえしなかった鳶(とんび)が、いつの間にかすぐ目の前で五六度圏(わ)を描いて舞ったかと思うと、サッと傍の葦間へ下りてしまう。
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
秋の夜長の、またゝきもせぬ電燈の光が、リヽーと彼女とたゞ二人だけを一つ圏(わ)の中に包んでゐる外は、天井の方までぼうつと暗くなつてゐる室内。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この国の石や砂を他邦へ持ち行き毒虫を取り廻らせば虫その輪を脱け出で得ず皆死す。この国の木で圏(わ)を画くもまたしかり。一説に狼と鼬(いたち)と狐には利(き)かぬとあり。
その突(つ)きあたりから本通りの方へ曲ろうとした途端(とたん)に、私は、その本通りの入口の、ちょうど宿屋の前あたりから、ぽうっと薄明(うすあか)るくなりだしている圏(わ)の中に、五六人
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
所々に少(ちい)さい圏(わ)を作って話をしているかと思えば、空虚な坐布団も間々(あいだあいだ)に出来ている。芸者達は暫く酌をしていたが、何か咡(ささや)き合って一度に立ってこん度は三味線を持って出た。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それからある種の動物は、ただその周囲の地上に圏(わ)の筋をひかれただけで、それを越し得ないというそれのように、柚木はここへ来ても老妓の雰囲気から脱し得られない自分がおかしかった。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
雄大なる白河内岳が、円く眼の前にボーッと立つ、この山を中心として、雲の大暈(おおがさ)が、幻のように圏(わ)を描いてひろがる、日輪の輪廓がひろがって黄色い葵の花のように、廻転するかと思われた。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
この人の頭の上で、空に圏(わ)をかいてゐるお前達。
秋の夜長の、またゝきもせぬ電燈の光が、リヽーと彼女とたゞ二人だけを一つ圏(わ)の中に包んでゐる外は、天井の方までぼうつと暗くなつてゐる室内。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
今の下士は夥伴(なかま)の兵士と砲声を耳にしつつしきりに語り合っている。糧餉を満載した車五輛、支那苦力の爺連(おやじれん)も圏(わ)をなして何ごとをかしゃべり立てている。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
長浜村まで出てみれば、盆踊が始まっている。浜の砂の上に大きな圏(わ)を作って踊る。男も女も、手拭の頬冠(ほおかむり)をして、着物の裾を片折(はしょ)って帯に挟(はさ)んでいる。襪(たび)はだしもあるが、多くは素足である。
鶏 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
肘(ひじ)と肘と触れ、背と背と合された人々が、駅ごとに二、三人ずつ減る、はてはバラバラになって、最後の停車場(ステーション)から、大きな、粗い圏(わ)を地平線に描いて散った、そうして思い思いの方向へと往(い)った。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
微かな蠱(まじ)の圏(わ)を己達の足の周囲(まわり)に引くらしい。
秋の夜長の、またたきもせぬ電燈の光が、リリーと彼女とただ二人だけを一つ圏(わ)の中に包んでいる外は、天井の方までぼうっと暗くなっている室内。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
時には今出たばかりの月が、黒いはつきりした林を背景にして、圏(わ)を成して集つてゐる群集と僧とを照した。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
杯を漬(つ)けた迹(あと)のコンサントリックな圏(わ)が泉の面に消えた。
杯 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
手前例の圏(わ)をかいて、文句を言って、2530