“鞺(ど)” の例文
それは延宝七年の春の二時(やつ)すぎであった。前は一望さえぎる物もない藍碧(らんぺき)の海で、其の海の彼方(かなた)から寄せて来る波は、鞺(ど)どんと大きな音をして堰堤に衝突とともに、雪のような飛沫をあげていた。
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そうして、彼は数人の兵士に守られつつ、月の光りに静まった萩(はぎ)と紫苑(しおん)の花壇を通り、紫竹(しちく)の茂った玉垣の間を白洲(しらす)へぬけて、磯まで来ると、兵士たちの嘲笑とともに鞺(ど)ッと浜藻の上へ投げ出された。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)