“諾(う)” の例文
いひなづけするまでの交際(つきあい)久しく、かたみに心の底まで知りあふ甲斐(かい)は否(いな)とも諾(う)ともいはるる中にこそあらめ、貴族仲間にては早くより目上の人にきめられたる夫婦
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
いかにも我は、目前に張りたる交錯せる綱を擇(えら)み引くことを得べし。されど我はその綱のいづれの處に結ばれたるを知るに由なし。我は恩人の勸に會ひて諾(う)と曰ひたり。
諾(う)け入れた——私が確かに信ずるやうに、變裝(へんそう)した神樣をです。もう既にそれは私をよくしてくれました。私の心は今迄は納骨堂(なふこつだう)みたいなものだつたけれど、もうこれからは神殿です。
否も諾(う)もわれは辞(いら)へじかにかくに人の心は人に任せめ
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
いいなずけするまでの交際(つきあい)久しく、かたみに心の底まで知りあう甲斐(かい)は否(いな)とも諾(う)ともいわるるうちにこそあらめ、貴族仲間にては早くより目上の人にきめられたる夫婦
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
我も否(いな)とも諾(う)とも云ふ暇なくして、接吻せられき。母上片手にて我頬を撫(さす)り、片手にて我衣をなほし給ふ。手尖(てさき)の隱るゝまで袖を引き、又頸を越すまで襟を揚げなどして、やう/\心を安(やすん)じ給ひき。