“滲(に)” の例文
女の一生の悲劇の大団円(カターストロフ)であった。啓吉は暗然として、滲(に)じむ涙(なみだ)を押えながら面を背(そむ)けてそこを去った。
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
水辺に夕暮の淡い色を滲(に)じみ出した紫陽花(あじさい)の一と群れに交わって、丸裸のまま、ギイギイ声を立て、田から田へ忙(せわ)しく水を配ばり、米を研(と)ぎ、材木を挽(ひ)いたりして、精を出して働いている。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
見ると、近藤氏は右の手を、額に加えて、新しく滲(に)じみ出ようとする涙を押えて居た。
大島が出来る話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)