“擢(ぬ)” の例文
躯(からだ)を捐(す)て頂を糜(び)し、もって万一に報ずるを思わず、かえって胸臆(きょうおく)を恣(ほしいまま)にし、擅(ほしいまま)に威福を作(な)す。死すべきの罪、髪を擢(ぬ)きて数えがたし。
続黄梁 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
三十一歳になったとき、又五郎は二百五十石の元高と家格を復活され、勝手方元締りに擢(ぬ)かれて、新たに屋敷をもらった。……これは例のまれな出頭だった。
葦 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
『クロイツェル・ソナタ』は、風格の高さと、趣味の純粋さにおいて一頭地を擢(ぬ)くもので、ある人はこのティボー、コルトーの組合せを以て第一の出来とするだろう。