“懐(だ)” の例文
旧字:懷
此様(こんな)女の人は、多勢の中ですもの、幾人もあったでしょうが、其赤(あか)さんを懐(だ)いて御居での方が、妙に私の心を動かしたのでした。
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
なお依然として未解決のままに遺されているかの如き感を懐(だ)いたままに、爾後三十年の歳月は空しく推移したのであった。
法隆寺再建非再建論の回顧 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
我々が懐(だ)く凡(あら)ゆる感情、例えば怒り、憎しみ、または愛にもせよ、凡(すべ)ての感激、冒険といったようなものは、人生及び自然から生起してくる刺戟である。
囚われたる現文壇 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と言い、生まれた後は、自分でその子を懐(だ)きなどしていたが、後、和尚の種子(たね)でなく、娘は一時のがれに和尚の名を汚(けが)したことが明らかになった時も、また
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
このもの海藻や珊瑚類に、尾を捲き付くる体画竜のごとく性至って子を愛し、雄の尾の裏または腹下に卵を懐(だ)く嚢(ふくろ)または皮あって、その内で孵(かえ)った子供が自活し得るようになって始めて出で去る。