“己(わ)” の例文
アブラハム、ヤコブなぞ遊牧族(ゆうぼくぞく)の老酋長の物語は、十勝の山中に牛馬と住む己(わ)が境涯に引くらべて、殊に興味が深いのであろう。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
己(おれ)の教えが悪いによって左様な道楽の者に成ったのだ、此の短冊は己(わ)が形見で有るから、是を持って何処(どこ)へでも往(い)けと云って、流石(さすが)の父も涙を含んで私(わし)の手に渡した時に
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
除り尽すことは、また我儕人間の幸福でないかも知れぬ。然しうつちやつて置けば、我儕は草に埋もれて了(しま)ふ。そこで草を除る。己(わ)が為に草を除るのだ。生命(いのち)の為に草をとるのだ。
草とり (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
己(わ)が太陽とけものに出会ふ
わがひとに与ふる哀歌 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
帰って縁に上って、手拭で悉皆体を拭いて、尚暫くは縁に真裸で立って居る。全く一皮(ひとかわ)脱(ぬ)いだ様で、己(わ)が体のあたりばかり涼しい気がそよぐ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
己(わ)が時逝(ゆ)きて朝顔の
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
然しながら己(わ)が造った型(かた)に囚(とら)われ易いのが人の弱点である。執着は常に力であるが、執着は終に死である。宇宙は生きて居る。人間は生きて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)